筧 駿樣

 あれから半年が経ちましたが、いかがお過ごしでしょうか。なんだか、駿にこん な改まった手紙を書くときがくるなんて信じられなくて、今とても気恥ずかしい のですが、そんな気持ちが駿に伝わればいいのにとも思います。
 こちらはだんだんと暖かくなり、徐々に春に近づいて行きますが、そちらはどう でしょうか。まだ寒いですか。それとも、もう暖かいでしょうか。アメリカのこ とは全然わからないので、少し寂しいです。駿は、寂しい思いはしていませんか 。英語ばかりで言葉が通じないことがないかちょっぴり心配ですが、駿のことだ から、全くの杞憂で終わりそうですね。けれど折角だから杞憂ついでに、最近英 会話を始めました。いつか駿と英語でお話ができるようにと、頑張っています。
 最近と言えば、小学生の頃に駿が通っていたアメフトチームが地区大会を突破し たそうです。久しぶりに覗いた小学校に垂れ幕が掛かっていたので、驚きました 。駿も、アメリカでたくさんアメフトをしているでしょうけど、怪我だけは気を つけて下さいね。
 一昨日、駿のお母さんが家へ来て、私の母に駿から連絡がないと愚痴を零してい ました。連絡がないのは元気は証拠、なんて母は言っていましたが、やっぱりち ゃんと連絡してあげたほうがいいと思います。駿のお母さん、本当に心配そうで 、私にまで連絡はなかったかと聞いてくるほどでした。
 駿は小さな頃から大きくて、強くて、私の憧れでした。それは、今でも変わりま せん。夢に向かって走りつづける駿のことが、私は大好きです。駿が、もっとも っと大きくなって帰って来る日を、楽しみに待っています。

                           




部屋の隅に転がった埃だらけの防具を握り締めて、泣いた。




三月、薄紅の蕾の如く無邪気な微笑みに苛まれる





090207