「真田って声でかいよね」 突然のえっちゃんの発現に一番驚いたのは真田本人ではなく私だった。それもそうだ、そんなに仲がいいわけでもない真田に、 えっちゃんはいきなり声をかけたのである。今日の昼は焼きそばパン、なんて考えていた私には予想外過ぎて心臓が飛び出そうだった。 コッペパンを食べようと開けた大口で、真田はそんなことないでござる!と叫んだ。いやいや、あんたもそんなことあるからね。 「それに言葉づかいも変」 えっちゃんは真田に恨みでもあるのだろうか。ずばずばと真田に言う姿はいっそ清々しい。私は手持無沙汰に財布をいじりながら、 この状態をどうしようかあぐねた。タイミング悪く猿飛も山村さんもいない。真田は今度こそ言い返せなくなって、眉を寄せた。 犬なら尻尾も耳も垂れてしまいそうなほど、しょんぼりしている。本当のことではあったが、少し可哀そうになってしまった。 それでもえっちゃんはお構いなしに、どうしてそんな言葉づかいなのかと聞いている。その姿は鬼気迫るものがあった。 本当に真田に恨みでもあるのだろうか。このままでは真田は死んでしまいそうだ。 「まあ、いいじゃない。ねえ、」 落ち着け落ち着け、とえっちゃんの肩を叩いた。それから、でもその、の押し問答を繰り返して、漸くえっちゃんは落ち着いた。 その顔は心底悔しそうである。そんなに重要な内容でもないだろうに。えっちゃんはまだ諦めきれないのか、今度聞かせてね! と言うと行くよ!とまるで私が待たせたような口調で言って、行ってしまった。おい、置いてくなバカ。えっちゃんが待たせたんだろ。 真田はようやく解放されたにも関わらず、まだ若干怯えていた。その姿にちょっと同情してしまった。間違いなく真田は被害者である。そして私も。 「お疲れ」 しょんぼりと項垂れた真田の肩を軽く叩いた。真田は力無げにああ、と呟くと不意にこちらを振り返り、切なげな表情で、殿も苦労するな、と言った。その表情は普段の赤レンジャーからは考えられないほど、大人びて、儚げだった。 一瞬、どきりとする。よく考えたらこいつも顔整ってるんだった、と今さらになって気がついた。これは、不意打ちだ。 |