2階にあるこの教室にもちょうど慣れたころだった。季節は晩春か、はたまた初夏か。朗らかな風が吹く青春の匂いの消えぬ教室で、 まさに青春を送る学生が4人。こんなことがあるんだと、唸らずにはいられない。頬杖をついて眺める先には、とても高校生とは思えないえら く整った顔立ちの伊達と、どこの赤レンジャーだと眉を顰めたくなるくらいの熱血漢の真田と、え?小○旬ポジション狙い?と突っ込みたくなる猿飛と、 明るくてちょっと天然な山村さん。まるで、本当にまるで、少女漫画の様だった。



少女漫画で言うところの、



彼らの存在を知ったのは高校1年、入学式の余韻が残る時期だった。同じ学年に御曹司がいる、なんておいしいネタ、女子高生が見逃すはずもない。 中学の頃の友達に会いに行くふりをして、覗いた教室にいた伊達とその仲間たちは、まさに少女漫画の設定みたいなやつらだった。その日から、 彼らは廊下を歩けばキャーキャーと騒がれ、教師には不良だと騒がれ、誰かの話題に出ない日はないというくらい学校中の有名人になっていた。 伊達、真田、猿飛、長曾我部、毛利、いや、毛利は違うか。生徒会だし。しかし話題の中心であったのは間違いない。例にもれず私もミーハーな女子たち に混ざってキャーキャーと言っていた。とはいえそれも半年で飽きて、2年になればクラスメイトになった長曾我部とそこそこ仲の良い部類になっていた。 それが、半年前の話。気づけば3年になった私は、長曾我部ともクラスが分かれ、あの少女漫画の設定みたいな野郎どもと関わることもないだろうと思って いたのだ。同じクラスになるまでは。いや、違う。訂正しよう。山村さんとその仲間たちを見るまでは、だ。

彼らは少女漫画のそれを素でやっていた。真田に恋する乙女な山村さんに、山村さんをバカにする伊達、そんな山村さんをお父さんのように優しい目で見る猿飛。
(こんなことって本当にあるんだなあー)
山村さんの好意に気づかない真田のアホさ加減に呆れる猿飛の図はなかなか良い構図だ。興味なさそうにクールキャラを演じる伊達は、 間違いなく読者人気がぶっちぎり1番のタイプだろう。(となると、私は端役Cくらいだろうか)(名前もなさそうだ)頬杖をついた手が痺れ始める頃、 ホームルームの始まりを告げる鐘がなる。ああ、今日も今日とて1日が始まる。



私は端役




あの空の青さえ憎くて慕わしい



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