ほんの少しだけ笑った気がした。それは気のせいであったかもしれない。けれども確かに笑った気がした。だから、私は嬉しくなったのだ。 母が喜ぶからと同じことを繰り返す幼子のように、それから私は殺し続けている。人をだ。そうしてその度に半兵衛様のところへ行く。ずっとだ。 気付けば十余年の時が過ぎていた。気付けば、秀吉様は死んでいた。けれども私は殺し続けた。そうして半兵衛様の元に通い続けた。もういっぱい殺したから、 きっとまた笑ってくれるに違いなかった。半兵衛様は秀吉様が死ぬ少し前からずっと床に入ったままだ。そうして部屋には入れてくれない。いつも障子の前で成果 だけ聞く。そうして次もよろしくねと言う。けれどもそれも随分と前から聞こえなくなった。それでも半兵衛様が次もと仰ったから、私は次もまた殺し続ける。いつ かまた笑ってくれるまで、殺し続けるのだ。 |