あれから幾つの季節を廻ったのでしょうか。この季節になると、貴方のことを思い出さずにはおれないのです。 それは笑顔ではありません。いきり立つ姿でもありません。ましてや泣き顔など、あり得るはずもない。 ですが貴方を思い出すのです。宙を漂う視線、抗うように動く唇、紅く染まる肢体。 其れは美しく艶やかで、虚ろな眼は何よりも官能的に、私の眼前に鮮明と映し出されるのです。 ああ、なんと儚げなことよ、憂愁の美とはまさにこのことと、思わずにはいられないほど、 貴方は全身から色香にも似た、噎せ返るほどの銷魂の念を溢れさせ、そうしてから、死すらも受け入れるような従容とした 面持ちで私を見つめるのだ。私はそれを悲嘆と高揚感の混じり合ったような、不可解でけれど何よりも醜穢な心持で見つめ返した。 政宗様、ああ、政宗様。なんと、穢れを知らぬ若殿よ。なんと、気高く高貴な御人よ。 満ちる戦火の香りは何よりも政宗様に似合っていた。火薬と鮮血と、怒声の混じり合う、猛々しく雄々しい世界。 けれどもその紅さは、何よりも貴方に不釣り合いだった。、政宗様は幽かに動く唇で、私の名を呟いた。 愛していた。吐き出された言葉に眩暈にも似た絶望を感じた。私は初めて、一筋の涙を零したのだった。 |