ただひたすらに恐ろしい。それは私の胸を抉り、臓物も全て引きずり出して、そ うしてぐちゃぐちゃに混ぜ合わせた。私はただ吐き気を抑える酔っ払いのように 口に手を当て、目の上の腫物を舐めようと必死に舌を出しては掌を舐め上げた。 果たしてお前は私をどうしたいのだ。零れ落ちる涙は足元に湖を造り、それは川 に繋がり海へと流れ込む。鳥は見えた。けれど空が見えない。首は見えた。けれ ど顔が見えない。私は見えた。けれどお前が見えない。私の叫び声は途方もなく 見窄らしく。お前の笑い声は穢らしく麗しい。お前の前に私は跪くのだ!そうし て貴方の愚かしい瞳に嘲笑い、私の足を舐める貴方を横目にお前の足に頬摺りを する。、貴方は哀願する。私を潔く通り過ぎ、それはお前の鼓膜をつんざい た。嗚呼、嗚呼。貴方の舐める私の右足は泥人形だ。親指はもう落ちた。貴方の 口は泥だらけだ。政宗、私は囁く。貴方はおそらくもう気づいている。ゆるゆる と持ち上げた手はすうるりと首を撫で、後頭部を支え。そうして、甘くとろける 接吻を。私の頬摺りするお前の右足は銅人形だ。赤銅色に光り輝く。私の頬は凍 てついていた。政宗、お前は叫ぶ。貴方はお前の唇に噛みついている。私の瞳を 通してお前に懇願し、そうして抗えずに私の唇を引きちぎる。滴る雫は何よりも 美しい。お前の見下ろす貴方は紙人形だ。その眼差しで燃えてしまう。お前の右 手は容赦なく貴方を握り潰した。 |