ガラス越しに差し込む日差しは酷く心地よく俺を照らした。透き通るような空は 快晴で、けれどどこか空しい。頬杖をついた左手は、俺の溜め息を飲み込む度に しっとりと汗ばむばかりだった。ゆるゆると教室中を彷徨う眼が実にもどかしい 。焦点を定めてはその度に離される視線は、俺を映すことは一度とてない。彼女 の可愛らしい旋毛を白い首筋へ向けてなぞるように眺めては、、と彼女の名 を口に含み、けれどそれを吐き出すことなく胃の中へと飲み下した。の瞳に 映る日を待ち続ける俺はこんなにも弱いことなど、彼女は未来永劫気づくことな く無邪気に俺を傷つけ続けるのだろう。振り向いたの眼は俺を通して、いつ だってあの男を視ていることを俺は知っている。

「政宗」

俺の名を呼びながら、しかしその儚げな唇の奥ではあの男の名を愛おしげに 囁いた。幽かに潤んだの瞳が何を求めているのか知っていて尚、俺はお前を 放すまいとその名を呼び、憂えた唇に噛みつくのだ。




弱虫なライオン



090206